国際支援受け入れとその他の課題

2011年の東日本大震災で、日本政府は163の国や地域、および43の国際機関から支援の申し出を受けました(出典:外務省HP)。国際支援の受け入れについては、特に1995年の阪神淡路大震災以降、関連する国内制度や受入れのため枠組みが徐々に整備されていました。一方で、東日本大震災という未曾有の大規模災害では、災害対応を担う自治体自身が被災したことにより、被災者ニーズの全体像を把握することが難しく、善意による国際支援とのマッチングで困難に直面しました。さらには、政府と非政府組織・民間企業・自衛隊などといった多部門にまたがる調整、そして中央政府と地方自治体間もしくは地方自治体同士の連携 といった次元でいずれも「連携・調整」が課題として浮き彫りとなりました。
 

2012年国際人道支援セミナーの開催

東日本大震災の経験をあらためて振り返り、またこうした課題を議論するため、2012年7月5日、OCHAは日本赤十字社、及び国際協力機構(JICA)との主催で、「国際人道支援セミナー:東日本大震災の経験から~より良い国際支援の担い手を目指して~」と題した公開セミナーを東京で開催しました。共催者に加えて、登壇者あるいはパネリストに外務省や内閣府、ジャパン・プラットフォーム、そして日本経済団体連合会(経団連)の代表者なども招いて、被災者の立場に立った人道支援とはどのようなものか、あるいは東日本大震災を経験した日本が国際的に果たすべき責務とは何かなど、活発な議論が行われました。
 
 

東日本大震災と国際人道支援研究会

このセミナーをきっかけに、国際人道支援や災害対応に携わる政府・民間の実務者有志が「東日本大震災と国際人道支援研究会」を立ち上げました。OCHA神戸事務所長の渡部も設立当初から研究会メンバーとして積極的に議論に参加してきました。この研究会の主な目的は、東日本大震災の際の緊急人道支援活動を国際的な観点から検証し、次の大規模自然災害への備えを強化するため具体的な政策提言を行うとともに、こうした震災の経験と教訓を国際社会に発信することで国際協力にも貢献するというものです。そして1年以上にも及ぶ検討の末、東日本大震災から3年を迎えた2014年3月、同研究会がその成果として提言書を発表しました。
 
 

2014年東日本大震災と国際人道支援研究会 公開セミナー

2014年3月7日、日本赤十字社とOCHAは東京でパブリックセミナーを共催し、「東日本大震災と国際人道支援研究会」の提言書を発表しました。同研究会座長の日本赤十字人道研究センターの東浦教授が提言内容のプレゼンテーションを行った後、研究会メンバーにNGOの代表者や有識者を加え、提言書が主に扱っている①国際支援受け入れ体制の強化、②国際的なスタンダードを踏まえた被災者支援のための国内最低統一基準作り、そして③これらに関連する人材育成という3つの観点について、それぞれの提言を実現していく上で何が必要かといった議論を行いました。
 
「東日本大震災と国際人道支援研究会 提言概要」(東浦日本赤十字国際人道研究センター長 発表スライド)>>
 
東日本大震災から3年を迎えましたが、この間様々な関係機関が東日本大震災当時の経験をレビューすることで教訓を紡ぎだしています。OCHA神戸事務所は、今後もこうした日本国内の努力をサポートしてまいります。特に、「東日本大震災と国際人道支援研究会」の提言書で取り扱われている国際支援受け入れに関する課題はOCHAの役割と密接に関係するもので、日本の関係者が教訓をしっかりと受け止め、必要な体制の充実や制度改革を図ることが、日本における次の大災害への備えを強化する上で不可欠だと考えます。また、国際人道コミュニティの間で既に確立しているシステムやスタンダード等を紹介することで、被災者支援のための国内最低統一基準作りを含め、国内対応の改善や人材育成にも貢献できればと考えています。同時に、こうした日本での取り組みを国際社会に伝えていくという点でも、「橋渡し役」としての役割を引き続き担っていく所存です。