エイドワーカーズダイアリー:マーシャル諸島の干ばつ

5月上旬、マーシャル諸島北部一帯で干ばつ宣言が発令されました。マーシャル諸島は北太平洋に位置する1,200程の島々や環礁から成る人口約54,000人の小さな国です。同宣言が出される以前から殆ど降雨が観測されない状態が何ヶ月も続き、ただでさえ限られた淡水の供給が既に逼迫していました。

この干ばつの被害を受けている約11,000人の住民に人道支援を届けるため、マーシャル諸島政府の要請により国連災害評価調整(UNDAC)チームが派遣されることになりました。OCHAアジア太平洋地域事務所の副所長である私(マーカス・ウェルヌ)は、そのチームを率いるべくマーシャル諸島に向かいました。

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私が普段勤務しているタイのバンコクからマーシャル諸島の首都マジュロまでは、約36時間の長旅です。フィリピンやグアムを経由し、更にミクロネシアやマーシャル環礁を繋ぐ幾つもの短いフライトを乗り継がなければなりません。私は太平洋地域で長年働いてきましたが、これらの島々や国々を移動する際の複雑さにはいまだに驚かされます。

マーシャル諸島を構成する他の33の環礁と同様、マジュロ環礁は水没した死火山の火口の外輪に沿って円形状に並んだ、小さな珊瑚礁の島々で構成されています。数千年もの間太平洋を吹き続けてきた風によって、陸上部分が海抜数メートルしかないような島々が形成されました。例えば、マジュロ市は一番高いところでも海抜3メートルしかなく、市全体の面積もわずか9平方キロメートルです。

どんな場合でも、人間にとって淡水へのアクセスが生死を分ける分岐点になります。しかしマーシャル諸島のような遠い離島では、いざ外部からの支援が必要となった場合、その輸送コストが非常に高くつくため、より切実な問題です。レジリエンス(強靭さ)という考え方は、これらの島々の人々にとってとても現実味のある課題なのです。

十分な降水量がないまま数ヶ月が経った4月中旬、環礁地帯の北部で飲料水がついに底をつき始め、マーシャル諸島政府は非常事態宣言を発令しました。そして5月8日、一連のアセスメントを行った結果、大統領が干ばつ災害を宣言しました。

全人口の5分の1にあたる約1万1,000人が干ばつの影響を受けていると見られることから、政府は国連にUNDACチームの派遣を要請しました。私たちの役割は政府のニーズアセスメントをサポートし、海外から入ってくる国際支援の調整にあたることでした。

到着してからまず最初に、私たちはマーシャル諸島政府の緊急対応センター内に支援業務の拠点を立ち上げました。その頃すでに政府の関連省庁や赤十字、ユニセフ、国際移住機関(IOM)といった人道支援機関が現地で活動を開始していました。私たちはマーシャル諸島政府と連携して、各機関がどこでどのような活動を展開しているのかを整理して地図に落とし込み、拡大する人道支援活動の調整を行って、こうした活動が政府策定による人道支援行動計画に基づいて実施されているかという確認作業を行いました。

またマーシャル諸島政府が国際支援をとりつける際のサポートも行いました。干ばつ災害が宣言されて以来、逆浸透淡水化装置17台がマジュロに届けられ、干ばつで被災した環礁地域に送られました。この装置は海水を淡水化して飲料水にするもので、そのおかげで当面の飲料水を確保することができましたが、長期的な解決策となるものではありませんでした。

マーシャル諸島における私のミッションはとても短いものでしたが、より効果的な国際支援受入れが出来るよう政府当局の能力向上に貢献するなど、小規模でもタイムリーに派遣されるならOCHAチームは結果を残すことが出来るという一つの良い事例を示せたと思います。しかし、私たちの仕事は決してこれで終わりというわけではありません。

5月末時点のラジオ・ニュージーランドのインタビューで「逆浸透淡水化装置が人々に飲料水を提供しているものの、食糧安全保障に関する問題が解決したわけではない」と、マーシャル諸島政府の国家水資源アドバイザーが述べています。

「干ばつの結果殆どの『パンノキ』の木が枯れ、地元で取れる食糧が不足している。また、最も干ばつが厳しいエネウェタック島では、地元の食用作物が全て枯れるという事態になり、住民への食糧供給が極めて深刻な問題だ。」

干ばつは少なくとも6月まで続くものと予想されており、私たちとしてもマーシャル諸島の人々がこの期間を何とか乗り切るため、引き続き最大限の支援をしなければなりません。しかし長期的には、この国が持つ根本的な脆弱性を解決するための取り組みがなされ、地域社会が高価な国際支援に頼らずにすむようサポートしていく必要があるのです。

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今回のUNDACチームには、日本の国際緊急援助隊から勝部司氏が派遣されました。今回のマーシャル諸島への派遣を振り返って、勝部氏は次のように述べています。

「政府の調整をサポートすることが今回の主な役割でした。災害対応に不慣れな政府にとっては支援調整が最重要課題でしたが、UNDACの活動を通じてクラスターアプローチを導入するなど、支援の効率化を図ることができました。現地で根付いたクラスターは、短期的な対応策だけでなく中長期的な支援計画を策定する際にも役立っています。」

クラスターアプローチについての詳細はこちら>>
OCHA本部ウェブストーリー(原文:英語)>>
国際協力機構(JICA)国際緊急援助隊事務局のウェブサイトはこちら>>
UNDACメンバーとして参加したJICAの勝部氏の活動報告>>