ビッグデータと人道支援:知ってほしい5つのこと

Big data and humanitarianism: 5 things you need to know

私たちは電話をかけたり、物を買ったり、ソーシャルメディアを使うたびに、一つ一つ新たなデータを生み出しています。そしてこれまで人類が生み出してきた全てのデータよりも多くのデータが、2011年のたった1年間で生み出されたと言われます。こうした膨大な情報を正確に分析できれば、様々な問いに対する答えを引き出すことが可能です。そして政府や(通信会社やインターネットプロバイダー等の)民間セクター、個人によって生み出され、保存されたこれら大量のデータが、いわゆる「ビッグデータ」です。

脆弱な被災コミュニティに対してよりよい支援を届けるため、こうした膨大な情報をどのように活用すべきか、人道支援機関は模索を続けています。そこで今回は、ビッグデータと人道支援について、知っておいて頂きたい5つのポイントを以下の通りまとめてみました。

1.「このネットワーク時代、ビッグデータが人道支援に携わる意思決定者にとって使い勝手のよいものとなるには大きな課題がありますが、このことは同時に大きなチャンスでもあります。」OCHAが先ごろ発表した「ネットワーク時代の人道支援」報告書はこのように指摘しています。確かに、ほぼリアルタイムで行き交う情報にアクセスできれば、人道支援機関は支援対象をより正確に絞り込み、刻一刻と変化するニーズにより的確に応える上での大きな助けとなります。

更には人道コミュニティが、先手を打って危機を回避したり、より迅速に対応する一助ともなるでしょう。例えばこれは2012年に発表された研究ですが、もしTwitter上のメッセージをリアルタイムでモニターできていたならば、2010年のハイチにおけるコレラ大流行を少なくとも公式な発表より2週間前には予測出来た可能性がありました。また「ネットワーク時代の人道支援」報告書でも、コレラによって人々が命を失うことは「防ぐことが可能であり、発生の初期段階であれば対処も容易」と指摘されています。情報が然るべきところに伝わるならば、多くの生命を救うことが出来るのです。

2.人道支援関係者は技術開発者から発想を得ることができる。人道支援が容易に活用できるようなものが、すでにたくさん存在しています。例えば国連が実施しているビッグデータプロジェクト『国連グローバルパルス』のディレクターである、ロバート・キクパトリック氏はこう語っています

「国連グローバル・パルスは、世界的な金融危機を契機に発想されたイニシアチブです。情報が高速で行き交い、一つの危機が瞬く間に世界中に波及する。私たちはそんな密接に結びついた世界で暮らしているということを強く認識しました。なのに私たちはほとんどの大切な政策決定をする際に、2〜3年も前の古い統計資料をいまだに使っていたりするのです。」

今年の初め、国連グローバル・パルスはコンテストを開催しました。例えば、これはコートジボワールの例ですが、携帯電話プロバイダーから自由に入手可能なデータについて、その革新的な利用方法を競い合いました。また入賞作品には、異なるエスニック・グループ毎のデータを地図に落とし込み、疫病の広がり方をモデル化するものもありました。

3.データへのアクセスは必ずしも容易ではありません。ハイチとコートジボワールの両ケースでは、データにアクセスするため民間の通信プロバイダーと交渉しなければなりませんでした。著作権や個人情報保護の懸念から、多くの企業は自社が持つ膨大な量のデータ共有に消極的です。同様に多くの政府も、自らが保有するデータを公にアクセス出来るようにすることには及び腰です(しかし2011年、ケニア政府は国が管理するデータをすべてオンラインで公表し、利用可能としました)。

ソーシャルメディアはその情報の多くが既に公開されているため、アクセスが容易なビッグデータ情報源の一つとなります。このため、ソーシャルメディアが人道支援とビッグデータに関連する初期研究と技術革新の多くを牽引してきました。例えば2012年の年末、フィリピンに台風ボファが上陸しましたが、この際デジタルボランティアによって構成された「デジタル人道ネットワーク」は、ソーシャルメディア上に広まった2万件程のメッセージを分類し、台風被害を地図に落とし込むという作業を台風上陸から実に24時間以内に達成出来たのです。

4.ビッグデータは、既存の情報源に取って代わるのではなく、これを補完するという位置付けでなくてはなりません。カタール電算研究所のパトリック·マイヤー氏は、ビッグデータによって情報にまつわる全ての問題が解決できると捉えるべきではないと警告しています。「実際の状況は二者択一ではなく、むしろ両方をということだと思います。ソーシャルメディアから得られる(危機関連の)ビッグデータは、従来の情報源や情報管理手法に取って代わるというよりむしろ、これらを補完するものなのです。」

特にソーシャルメディアから得られるビッグデータには限界もあります。明らかなものとしては、バイアスがかかっているという懸念が挙げられます。ことにインターネットへのアクセスが限られている発展途上国などにおいては、ツイッターから引き出されるデータの殆どが都市に住むエリートたちの意見をより多く反映していると考えられます。しかし、データにおけるバイアスの問題は今に始まったことではなく、バランスを取ったり、修正する方法もまた存在します。

加えてソーシャルメディアから引き出される情報の正確性については、過度に疑問視される傾向もあるようです。例えば英国ガーディアン紙は、2011年ロンドン暴動の際、ツイッターが間違った情報を正す役割を果たしていたことを示す説得力のある報告を伝えています。

5.より良いデータが、必ずしもより良い意思決定につながると楽観視することは出来ません。ビッグデータの活用は、根拠となる情報に基づくより良い意思決定を導くものであるべきです。しかし残念なことに、意思決定は常に事実に基づいてなされるとは限りません。2011年に「アフリカの角」地域で起こった飢餓を振り返ると、迫り来る食糧危機について実に多くの国連機関や人道支援団体が早くは2010年から警告をしていたのです。

ソマリアを襲った飢饉の前年には、監視機関であるFEWSNETが既に70件以上の早期警報を出し、またドナー政府に対して数十件もの報告を行っていました。しかし、これらに対して行動が取られることはなく、大きな危機的状況に到ってようやく、必要とされた膨大な支援が展開されるようになったのです。にもかかわらず手遅れとなり、いのちを失った人々は数万人にも及んだといわれています。

OCHA本部レポート(英語)>>