フィリピン・ミンダナオ島:平和の配当

何十年も続いた紛争で荒廃してしまったフィリピン・ミンダナオ島。この紛争で犠牲になった人は15万人、そして200万人以上が家を追われたと言われています。しかし昨年成立した「ミンダナオ和平枠組み合意」により、住民は武器を農具に持ち替え、ようやく復興と生活再建が始まりました。長年にわたる戦闘で荒れ果てたカティラカン村に、平和と新しい暮らしをもたらすため、地域社会とフィリピン政府、そして人道支援機関が協力して行った取り組みとは?OCHA本部レポートの日本語版です。

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フィリピン:平和の配当
Philippines: The Dividends of Peace

カティラカン村はこれまで一度も豊かさというものを享受した経験がありません。2,500人の住民は、伝統的に小規模農業と漁業で生計を立ててきました。またこの小さな村の人々は何十年もの間、長く熾烈なミンダナオ紛争に巻き込まれてきました。この40年ほどは政府と武装勢力の双方がこの地の支配権を主張し、氏族間の衝突と高い犯罪率にさらされてきました。

そのため地域のイスラム・コミュニティは、社会から取り残されたような状態に置かれています。2011年、かつてないほど深刻な武力衝突が起こり、地域住民全員が避難するような事態となりました。一年後人々が村に戻った時には、村もその周辺も壊滅的な打撃を受けて、すっかり荒廃していました。

コタバトに拠点を置くOCHA現地事務所のムクタル・アリ・ファラー所長は、「人々はまったくゼロからやり直さなくてはなりませんでした。暮らし、学校、飲料水や医療設備など、一切合財を失ってしまったのです」と語っています。

何十年にもわたる紛争によって、15万人もの命が奪われ、200万人以上が避難を余儀なくされました。世界銀行によると、1971年から2000年の間に紛争がミンダナオの人々に与えた損害は推定20-30億ドルに及び、多くの地域を経済的に疲弊させる結果となりました。

しかし昨年署名された「和平枠組み合意」に基づき、フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)の指導者たちは今年4月、数万人規模の避難民の帰還を促進することで合意しました。

インフラと信頼の再構築

カティラカン村のような地域社会にとって、和平実現の可能性は、失わった家や暮らしを再建する機会だけでなく、コミュニティ内の分裂をも克服する機会をもたらすことを意味します。

OCHAのファラー氏は「住民にとって、もはや紛争という選択肢はありえません。もし村が戦闘状態に戻ってしまったら、失うものがあまりにも大きすぎます。人々は和平に向けて動き出しています」と説明しています。

カティラカン村の人々は力をあわせて、貧困と脆弱性の悪循環を断ち切るためのプログラムを練り、社会福祉開発省と国連開発計画(UNDP)の支援を得て、養魚場と野菜の園芸を立ち上げました。

既にこれらの収穫高は劇的に向上し、世界食糧計画(WFP)がサポートしている学校給食プログラムにも貢献しています。そしてこうした活動が生み出す価値は、単なる食料生産高の増加に留まりません。

カティラカン村に住民が帰還して以来、学校の教頭を務めているバイボン・グイアニさんは「宗教の違いに関わらず女性や若者たちをひとつにまとめたところが、この生計支援プロジェクトの主な成果です。このプロジェクトのおかげで、今ではこうした人々が自ら投資を行い、地域コミュニティの発展に役立っているのですから」と述べています。

「武器をショベルと交換」

実際このプログラムには村全体が取り組んでいます。

現在コミュニティのリーダーで、かつてMILFのリーダーであったアダム・S・マリム氏は「我々は武器とショベルを交換したのです。これはやっとの思いで手に入れた平和の配当なのです」と強調しています。

養魚場と園芸農業の収益の一部は事業拡大のための再投資に充てられるものの、それ以外の大部分は住民に分配されます。また新しい住まいや飲料水へのアクセス、新しい小学校やデイケアセンター、プライマリー保健施設、魚を日干しにするための施設の建設など、より一般的な、いわゆる復興事業からも恩恵を受けています。加えて、頻発する洪水で作物が流されないよう堤防が建設され、雨季を前に防災対策にもなりました。

「平和構築は時間がかかるものです」と強調するのはOCHAのファラー氏。「きちんとした生活条件を作り上げることで、こうしたものを失わないためにも平和を追い求めなければならないということを、住民の皆さんに心からわかってもらえるようにしなければなりません。カティラカン村のケースは、地域社会と政府、人道支援機関が協力すれば必ず何か達成できるということを示した一つの成功例なのです。」

OCHA本部レポート(英語)>>
Humanitarian Response Philippinesへのリンク(英語)>>