ミャンマー関連IRINニュースのご紹介

日本からの投資などで注目が集まっているミャンマーですが、北部カチン州では政府軍と武装勢力との間で対立が続いています。国内避難民への支援といった人道問題を抱える中、カチン州では今いったい何が起こっているのか。そしてその背景にあるものとは。最新のIRINニュースを日本語訳致しました。

 

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ミャンマー:カチン州の平和実現に向けて
Briefing:Fresh hopes for peace in Myanmar’s Kachin State

カチン州、2013年6月3日(IRIN) –最近の和平交渉の進展を、国連等は歓迎しています。一方、専門家は真の信頼関係構築には時間がかかるだろうと見ています。

5月31日、自治権の拡大を求めて何十年も闘争を続けてきた少数民族カチン族の武装組織「カチン独立機構(KIO)」とミャンマー政府は、数万人に上る国内避難民(IDPs)の再定住についての協議を実施し、さらに対話を継続していくことで合意しました。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、(ミャンマー北部に位置する)カチン州とシャン州は8万5,000人以上の国内避難民を抱え、そのうち5万人(58.5%)がKIOの軍事部門である「カチン独立軍(KIA)」の管轄地域で暮らしています。その他の国内避難民の多くは、親類・知人の家などに身を寄せています。

戦闘により過去2年間で数百人が命を落とし、人々の生業や地域のインフラも甚大な被害を受けています。

在ミャンマー人道カントリーチームが最近発表した「カチン州対応計画」によれば、2012年後半に戦闘が激化したため、更に数千人以上もの人々が家を追われたことが報告されています。

2月に和平交渉が再開されて以降、国内避難民の発生数は減りましたが、依然続く緊張状態や生計手段の欠如、また残留する地雷といった理由から、多くの国内避難民が帰還できずにいます。

和平会談にオブザーバーとして参加していたビジェイ・ナンビアー国連特別顧問は、今回の合意に基づき両当事者がカチン州に住む140万人の人道ニーズや懸案事項に取り組むようになることを期待しています。

しかしながら今回の合意にも関わらず、双方の間には依然として根強い不信感があると専門家は指摘しています。

「カチン族は17年間停戦状態を維持し、連邦体制にすべきか中央集権の単一国家にすべきか等、ビルマの将来についての正当な対話の機会を長らく待ち続けてきました。なのに何も進展しなかったのです。カチン族の政党は、2010年11月に実施された選挙への参加すら認められませんでした。そして2011年6月、政府軍がカチン族に対して軍事攻撃を始めたのです。」ミャンマー問題のアナリストであるバーティル・リントナー氏はIRINにこう語っています。

2011年以降、政府と反政府側との和平協議は、中国で実施された5回を含めて、のべ14回にも及びました。交渉の進展を妨げている最大の障害は、政治的議論の前に停戦と地域開発を先行させようとする政府側の強行姿勢だと説明しています。

一方、双方による人権侵害が継続しています。

「ヒューマンライツ・ウォッチ(HRW)やその他多くの人権保護団体が、政府軍とKIA双方による極めて深刻な人権侵害が認められると報告しています。そして中には戦争犯罪に等しい重篤な事例もあります。とにかく何より重要なのは、これらの人権侵害を即刻止めることなのです。」とHRWのマシーソン氏は訴えています。

この紛争の背景にあるものは?

(5,700万人の人口と135のエスニックグループを抱える)ミャンマーは資源の豊富な国で、カチン州はヒスイと木材の宝庫です。

「鉱物資源であれ、水力発電や農業資源であれ、ミャンマー政府と政府軍にとってこれら天然資源へのアクセスと支配が、プロジェクト対象地域に介入しこれを掌握しようとする最大の動機であることは疑いようがありません。」とアース・ライツ・インターナショナル(Earth Rights International)の広報ディレクターであるポール・ドノウィッチ氏は述べています。

欧州連合や主要欧米諸国による制裁が解かれた今、政府によって長らく忘れ去られていた少数民族居住地域の政治的指導者は、自らの資源に対するコントロールを強めようとしています。

「天然資源へのアクセスやそこから得られる利益を主な理由として、自らの土地の支配権を確立しようとするミャンマー政府に対し、カチン族の人々は抵抗してきたのです。」

なぜアクセスが難しいのか?

支援活動従事者によれば、政府管轄下にある地域では人道支援が定期的に提供されてきたにも拘らず、KIAの支配下にある地域へは、国際的な支援活動従事者の通行許可さえ滅多に認めらていません。政府管轄地域から足を伸ばすようなその場限りのミッションが稀に許可される程度です。

「ビルマ当局は、脆弱なコミュニティに対する人道支援の許可をもっと真剣に考慮すべきです。しかしそれどころか、当局は繰り返し支援物資の輸送を阻止してきました。」と、HRWのミャンマー研究者であるデイビット・マシーソン氏は指摘しています。

国連や国際的な援助団体がKIO支配地域に立ち入ることをミャンマー政府が阻止し続けていると、国際的NGOレフュジーズ・インターナショナル(Refugees International)の5月29日付報告書も指摘しています。従って、カチン州で暮らす国内避難民の殆どが、一時避難所や食糧、保健医療サービス、水と衛生設備をはじめ、教育支援や保護といった基本的な人道ニーズを満たすために、地域社会組織(CBOs)や宗教系慈善団体に大きく依存せざるを得ません。

たとえ最も装備が整った人道支援機関であっても、KIO管轄地域にある国内避難民キャンプへのアクセスは非常に困難なものです。多くのキャンプは遠隔地の山あいにあり、雨季の間(5月から10月)道路はほとんど通行不能となります。物資を輸送するにはしばしばラバを使わなければならないことから、地域社会組織による支援の速度がどうしても遅れがちで、より煩雑な作業を必要とし、結果として活動自体も制限されてしまうと報告書は説明しています。

他方、反政府軍支配地域への国際的な支援を政府が拒否していることが、和平への最大の障壁となっていると多くの専門家が分析しています。

「双方の当事者間で多くの協議が行われてきましたが、政府高官と軍の指導者しか協議の場に参加してきませんでした。仲介する第三者がいないため、こうした人々が誤った行動をとっていたとしても、だれも指摘することができません。」カチン州にある8つの支援機関を取りまとめるWun Pawng Ninghtoi (WPN)のマリー・タウム氏はこう述べています。

カチン族に急進化の動き?

専門家は、和平の進展には信頼構築が必要不可欠であるとしています。しかし、昨年12月KIA管轄地域の事実上の首都であるライザ市郊外の丘でミャンマー政府軍が仕掛けた大規模な攻撃により、その信頼は大きく損なわれました。

KIAのゲン・グァン・モウ副司令官は、カチン族が軍民あげて自らの領土を死守するとの断固とした立場を表明しています。実際、副司令官は以下のコメントをライザ市からIRINに寄せています。

「KIAの兵士だけでなくカチン族は皆、政府軍による砲撃がカチン族の抹殺を意図したものだと思っています。そのため、いかなる困難に直面しようとも、兵士も一般人も決して諦めることなく自分達の領土を守る決意で団結しています。」

一方、KIAが政府が管轄する国境警備部隊への吸収を拒否した後、2011年11月の選挙でKIO寄りの政治家の名が投票用紙から削除された事例を挙げて「2010年の一件以来、カチン族の間で急進化が進んだことは疑いようがありません。」とリントナー氏は述べています。「停戦前、KIOは腐敗から民衆の支持を失っていましたが、現在ではカチン族全体の支持を得ているようです。」

対話は続くか?

直近の和平交渉内容には、カチン族などミャンマーの主要な11の少数民族の代表に加え国連の代表団も参加する合同監視委員会の設置計画が含まれています。

この点について、政府の和平交渉チームメンバーの一人であるニョ・オ・ミント氏は「彼ら(KIO)は政治的対話と平和的紛争解決に取り組む用意がありますが、新たな合意内容が19年前にミャンマー政府と交わしたものより具体性があること確かめたいはずです。」とコメントしています。

先週なされた合意の結果、2011年6月に衝突が起こって以来初めて、政府とKIO間のミャンマー国内での会合が開かれました。これに先立ち、今年1月にはミャンマー政府が一方的な停戦を宣言しています。またその1ヶ月後には、両当事者が中国で会合を開き、紛争の鎮静化へ向けた全体的な枠組作りに取り組むことで合意しています。

IRINニュース(原文:英語)>>